- これまでたくさんのFIRE本を読んできたけれど、どれも米国でのFIREの話が中心でなんかしっくりこなかった
- 日本の社会保障制度や年金制度に基づいてFIREの計画を立てたい!
上記のような想いを抱いている人におすすめしたい本があります。
山崎俊輔さんの著書『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』です。
本書はファイナンシャルプランナー(FP)として活躍している著者の山崎俊輔さんが、日本の社会保障制度、税制優遇制度、退職金制度、高齢者雇用制度などを踏まえつつ、「日本版FIREの教科書」として内容がまとまっています。
私もこれまで数々のFIRE本を読んできましたが、FIREムーブメントの本場である米国でFIREを成し遂げた著者によるものが多かった印象です。
FIREの本質的な考え方は国による差はありませんが、米国と日本では社会保障制度などは大きく変わってきます。
そのような背景を踏まえると、本書は日本の制度に基づいてFIREをどう計画すべきか、またあまりFIRE本では触れられることのなかった標準的な老後についても言及されているので一線を画するものとなっています。
また、これまでのFIRE本の著者のように30代でFIREを実現しましたといった内容ではなく、日本の制度や老後問題を加味しながら40代、50代、60代前半でFIREを目指そうといった内容になっているため、本書のタイトルにも記載があるように「普通の会社員」でもFIREを目指せるように難易度を下げています。
FIREを目指すにあたって、リタイア後に関わる日本の制度を知っておくことは非常に重要ですので、ぜひ気になった方は本書を読まれてみてください。
本記事では、本書を読んで個人的に気になった「住宅」と「公的年金」の考え方について紹介していきたいと思います。
住宅の取得はFIRE実現に欠かせない要素のひとつ
本書を読んで一番びっくりしたのが、住宅の取得を考えることはFIRE実現に欠かせない要素のひとつだと述べられていたことです。
家を購入したら何千万円もの支出になるので、余計FIREから遠ざかるじゃん…って正直に思いました。
加えて、「住宅の購入+FIRE分の資産確保」があって、FIREに踏み切れると考える必要があると述べられています。
これは前提となる考え方の違いだと思いますが、本書ではリタイア後の年間生活費と家賃を切り分けて考えています。
具体的に表すと、「リタイア後の年間生活費400万円」+「毎月家賃6万円(年間72万円)」=472万円がFIRE生活に必要という感じです。(私はリタイア後の年間生活費って家賃も含まれているものだと思っていました…)
この前提に基づくと、自宅を取得してあるということは固定資産税などの負担を織り込めば、永続的に家賃の心配はいらなくなります。
なので、先ほどの例に戻ると、住宅を持つことで家賃が不要になるので「リタイア後の年間生活費400万円」の準備で済むようになります。
加えて、もう1つ大きな理由というのがリタイア後の生活にあります。
基本的に老後は公的年金をもらって生活していくことになります。
ただ、この公的年金の水準は「家賃手当」を含んで設定されていないのでマイホーム抜きの老後は結構厳しくなります。
令和2年度の厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は220,724円となっており、この金額はあくまで日常生活費と等しく設定されています。
つまり、老後に住宅を持っていない人が年金だけで生活しようとすると家賃分を毎月貯金から取り崩していくという状況に陥ります。
そのため、生涯を賃貸で過ごしたいと考える人は、「老後に2000万円」問題とは別に「老後の生涯家賃相当分」を確保してリタイアする必要があるのです。
仮にリタイア後を月6万円のシンプルな部屋で暮らすとしても、人生100年時代を見込めば標準的な引退年齢65歳から35年分を考えると、なんと2520万円にのぼります。
65歳で引退して100歳まで生きた場合にかかる家賃でもとても大きな金額になるのに、さらに若くして40歳でリタイアするとなるとさらに1800万円(6万円/月×12ヶ月×25年)が必要になります。
現役時代は賃貸派でもいいのですが、ことFIRE後、そして老後については死ぬまで居座れる「終の住居」は必要だと考えられるのです。
『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』山崎俊輔
また、住宅ローン設定者に税制優遇が与えられるのも無視できません。
住宅ローン減税はiDeCoと並んで会社員が得られる数少ない税制メリット(所得控除)です。
さらに、実際問題、著者がFIREに成功した人を見る限り、自宅を確保していることが多いそうです。
理由としてはFIRE成功者やファイナンシャルプランナーは、住宅の購入なども「資産形成の一部」と考えているからでしょう。
たしかに、住宅の知識をしっかり身につけて、住宅購入をシビアにすれば、いい住宅戦略も描けるなと思いました。
実際に住宅の知識がある人は価値のある住宅を購入してそこに住み、必要がなくなったら売却して利益が出ている人が多いような気がします。
住宅購入もFIRE計画に織り込む重要性が分かりました。
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FIREするともらえる公的年金水準が下がる問題
FIREを考えるにあたってこれまでのFIRE本ではあまり触れられていませんでしたが、知っておいたほうがいいのは公的年金制度です。
FIREを考える人は「標準的な引退年齢より早くリタイアするための資金確保」と「標準的な引退年齢以降の老後資金確保」の2つを同時に実行していく必要があります。
このとき「一生涯保障されている定期収入」として老後資金を賄ってくれるのが公的年金です。
本書を読んで今さら気づきましたが、公的年金って終身給付の不労所得って考えたらめっちゃ素晴らしいですね!
ただ、FIRE(早期リタイア)してしまうと国からもらえる年金額が大幅ダウンしてしまう問題に直面します。
国民年金は20歳から60歳まで加入が義務づけられていますが、厚生年金に関してはリタイア後は厚生年金保険料を納める義務がなくなります。
厚生年金に関する計算式を簡略化すると以下のようになります。
(保険料を納めていた期間の平均賃金)×(保険料を納めていた年数)×(生年月日等での係数)
つまり、
- 平均賃金が高い人はその分年金額も増える
- 加入年数が長い人はその分年金額も増える
ということです。
なので、同じ平均賃金の人がいたとすると、45歳で辞めてFIREした人と65歳で働いた人では長く働いた人のほうの年金額がその分アップします。
23年働いてFIREした人と43年働いた人とでは早期退職した人は年金がほぼ半分になるということになります。
このようにFIREを目指す人にとっては「早期リタイアすると、その分厚生年金水準が下がる」という問題を直視しなければなりません。
では、この問題にどう対処すべきでしょうか。
著者は通常のFIREに必要な資産の上積みだけでは十分ではなく、65歳以降の本来のリタイア生活がはじまったとき、公的年金水準がダウンする分を上乗せしてFIREを準備していく必要があると述べています。
iDeCoやつみたてNISAなどの制度を活用できるといいですね。
まとめ:FIREはマネーリテラシーの総合問題
以上、ファイナンシャルプランナー山崎俊輔さんの著書『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』より個人的に印象に残った部分を紹介させていただきました。
これまでのFIRE本は資産形成を通じてFIREを達成した人たちによるFIRE達成に必要な戦略や心構えが説かれた内容のものが多かったですが、本書はFPが書いた本ということもあって日本の様々な制度も考慮したうえでのFIRE計画を学べて面白かったです。
FIREを目指すということは、ライフプランニングとリタイアメントプランそのものであり、FP分野を勉強している身として非常に共感できました。
FIREは収入を上げる方法、節約する方法、投資の知識、税制、住居や暮らしなど必要とする知識が幅広く、マネーリテラシーの総合問題といった側面があります。
こうやって考えると改めてFIREは非常に要求されるレベルが高いなと感じましたが、よりいっそう勉強してFIREを達成したいと思いました。(私はサイドFIREを目指しています。)
ぜひ、本書が気になった方は手に取って読んでみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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