経済・投資理論

【書評/要約】『これからの投資の思考法』柴山和久(ウェルスナビCEO)

これから資産運用(投資)をはじめようと思っている方にぜひとも読んでいただきたい1冊を紹介します。

ウェルスナビCEO、柴山和久さんの著書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』です。

これまで財務省やマッキンゼーでお金に関わる仕事に携わってきた著者が辿り着いた”資産運用のあるべき姿”や資産運用における「長期・積立・分散」の重要性が分かりやすく解説されています。

資産運用をこれからはじめようと思っている人にとっては非常に分かりやすい入門書となりますし、既に資産運用に取り組んでいる人にとっても学べる要素は非常に多いです。

私自身も本書を読んで、改めて資産運用における「長期・積立・分散」投資の重要性を学ぶことができました。

老後の年金問題を抱える我々日本人の必読書と言っても過言ではないくらいの良書です。

こんな人におすすめ!!

・資産運用(投資)をはじめようと思っている人
・老後の年金問題に不安を持っている人
・20代、30代の若者

著者:柴山和久

著者はウェルスナビCEOの柴山和久さんです。

ウェルスナビとは、本書のキーワードでもある「長期・積立・分散」の資産運用をロボアドバイザーを用いて全自動で行うサービスです。

柴山さんは新卒で財務省に入省し、日英で予算、税制、金融、国際交渉に従事されてきました。

その後マッキンゼーにおいて日米の金融プロジェクトに従事し、ウォール街に本拠を置く資産規模10兆円の機関投資家をサポートする仕事にも携わっています。

大学を卒業してからは一貫して、お金に携わるキャリアを歩んでいます。

財務省やマッキンゼーでは数千億円や数兆円といった単位を扱う一方、自身の貯金は8万円まで落ち込む時期があったそうです。

また、国際結婚をされており、あるときにアメリカ人の義父母の金融資産を見て、日本にいる自分の両親の金融資産との開きに10倍もの差があったことに衝撃を受けます。

妻も義父母も普通の生活は質素であり、自分の両親と年齢や学歴、職歴も同じにもかかわらず何がこの差を決定づけたのか。

それが、義父母は若い時から20年以上にわたって「長期・積立・分散」の資産運用をしてきたからということでした。

しかも、義父母は金融リテラシーが高かったわけでもなく、たまたま富裕層向けの資産運用サービスを受けることができたからというだけでした。

このような原体験があり、資産運用のアルゴリズムとテクノロジーを用いて、ウェルスナビというサービスをスタートさせています。

自身の経験をきっかけに、プログラミングスキルを習得して誰でも資産運用に取り組めるインフラ(ウェルスナビ)を整えているという点が非常に素敵だなと思えました。

r>g

本書のキーワードは「長期・積立・分散」です。

本題に入る前に1つ知っておいてほしい考え方を紹介します。

それが、トマ・ピケティが『21世紀の資本』で紹介している「r>g」という数式です。

rは資本のリターンgは経済成長率を表します。

もう少し噛み砕いて説明すると、資本のリターンとは株式などから得られるリターンのこと、経済成長率とは対前年比でのGDPの伸び率のことです。

つまり、この数式が示すのは、投資のリターンは経済成長率を上回るということです。

本書では、1992年からの25年間のシュミレーションが行われています。

具体的な数値で示すと、資産運用のリターン(r)が年平均で5.9%>世界経済の成長率(g)が年平均で3.7%となっていました。

今後についてもIMF(国際通貨基金)は、世界経済は3~4%程度で成長していくと予測しています。

なので、r>gを前提とすれば、資産運用のリターン(r)は年平均で4~6%が今後も期待できそうです。

このように投資を行うことによって、経済成長率を上回るリターンを得ることができると「r>g」を解釈していただければ大丈夫です。

もう少し本質的な部分に迫ると、資本家は投資をしている分だけ利益率(r)が伸びていくのに対し、労働者は一般的に賃金がGDPの成長(g)と並行して伸びていくので、資本主義社会においては資本家と労働者の格差が広がっていくということをピケティは指摘しています。

ピケティは資本の論理そのものが不平等を拡大させるということをこの数式から述べているのです。

このピケティの指摘から得られる重要な教訓は、資産(お金)を増やしたいなら資本家になるべきということです。

そして、今の時代は少額からでも誰でも資本家になることができます。

まずは、少額からでも投資の世界へ一歩踏み出してみることが重要だと思います。

長期・積立・分散

「長期・積立・分散」という言葉については、つみたてNISAの普及やインデックス投資の流行もあって日本でも資産運用を考えたことがある人は1度は聞いたことがあるかもしれません。

ただ、世界的には「長期・積立・分散」はスタンダードな運用手法となっています。

本書では、「長期・積立・分散」の資産運用についてこのように述べられています。

「長期・積立・分散」の資産運用とは、
・10年以上(できれば20年以上)の長期投資
・毎月、一定の金額を投じる積立投資
・世界中のさまざまな資産への分散投資
を組み合わせることです。

『これからの投資の思考法』 柴山和久著

一つずつ本書のポイントを解説していきます。

Point① 「長期投資」は金融危機の荒波を乗り越えてきた

本書のシュミレーションでは、1992年から2017年までの25年間に「長期・積立・分散」の資産運用を行った場合が想定されています。

実はこの25年間の間に、国際的な金融危機は5回発生しています。

1997年 アジア通貨危機が発生し、日本では山一証券が破綻

1998年 ロシアの財政危機(ルーブル危機)によって世界最大規模のヘッジファンドが破綻し、アメリカ政府が救済に乗り出す事態に

2000年 ドットコム・バブルの崩壊

2008年 リーマンショック

2012年 ギリシャの財政危機に端を発するユーロ危機

過去を振り返ってみると、株式市場へのインパクトがかなり大きい金融危機が発生していることが分かります。

特に100年に1度とも言われるリーマンショックに関しては桁違いのインパクトだったと思います。

シュミレーションの話に戻りますが、これらの金融危機を経て資産はいずれも一時的には減るものの、「長期・積立・分散」の資産運用を続けていれば資産は増えていることが明らかとなっています。

25年とはいわず、このシュミレーションの期間においてどの10年を切り取ってみてもリターンはプラスになります。

100年に1度ともいわれるリーマンショックが起こった期間を含めても「長期・積立・分散」の資産運用を行うことによってプラスのリターンが得られるというのはこれから長期投資を行う投資家にとっては非常に心強いデータとなります。

長期投資は非常に重要ですが、このような金融危機が起こっても投資を辞めずに市場に居続けるということがより重要ですね。

Point② 「分散投資」でリスクを抑えられる

「卵は1つのカゴに盛るな」という投資格言があるように投資の世界ではリスクを分散させることが重要です。

本書において分散投資は、‭ひとつの国だけではなくいろいろな国に分散し、また株式や債券、不動産など様々な種類の資産に分散して投資をするとしています。

分散投資が重要なのは、様々な資産を組み合わせることでリスクを減らして安定的に資産運用ができるからです。

たとえば、株と債券では違う動き方をします。

リーマンショックの時も株式市場は暴落する一方、比較的安全性の高い米国債や安全資産の代表とされる金の価格は上昇しています。

このように資産を分散しておくことで、相場が大きく崩れた時にリスクをある程度吸収してくれます。

Point③ 「積立投資」は為替リスクをコントロールできる

本書でのシュミレーションは世界の基軸通貨であるドル建てで結果を見ていました。

これを円で換算した場合に「為替リスク」をコントロールできるのか。

結果から言えば、円建てでもドル建ての時と同じ成果が出ており、為替リスクをコントロールすることができていました。

理由は積立投資を行うことによって、円高の時でも円安の時でも購入することになるので、ドルコスト平均法が働き、為替レートが平準化されるためです。

また、積立投資のメリットとして心理的な影響を受けにくいので、淡々と投資を続けることができることも挙げられます。

お金は自由を得る手段

最後に著者が考えるお金の存在意義について紹介します。

柴山さんはお金について、「願いを叶える」ために必要であったり、「望まないことをしない」ために必要になると述べています。

つまり、お金は自由を得る手段という考え方です。

ただ、一方でお金に執着してしまうと自由を失うことにもつながってしまいます。

本当はやりたい仕事があるのに、高収入だからとやりたくもない現職を続けてしまうというのがいい例です。

著者の柴山さんにはお金を通じて自由を得るために実践してきた3つのルールがあります。

①若いときは自己投資で可能性を広げる
②働かなくても2年間やっていける蓄えをつくる
③収入が増えても生活水準を上げすぎない

非常に賛同できる内容でした。

私も経済的自立と自己実現を目指して、金融資産形成と人的資本形成に取り組んでいます。

自己投資の対象先は様々ですが、自己投資こそが人生において最終期には大きなリターンを生み出します。

私自身が20代前半から取り組んでいる人的資本形成(自己投資)については、以下の記事で紹介しておりますのでご興味ある方は併せてご覧いただければと思います。

また、働かなくてもやっていける蓄えをつくることも非常に重要です。

いわゆる生活防衛資金の構築です。

生活防衛資金に関しては、役割と必要金額を以下の記事で紹介しています。

そして、収入が増えたとしても生活水準を上げすぎないことも非常に重要です。

大金を手にして生活水準を引き上げすぎたために資産を失った例もたくさんあるので、この点も資産形成においては意識していきたいですね。

まとめ

以上、ウェルスナビCEO柴山和久さんの著書『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』より、「長期・積立・分散」に焦点を当てて内容を紹介させていただきました。

「長期・積立・分散」の資産運用は日本でもようやく広まりつつはありますが、世界ではスタンダードな運用手法です。

また、時間を味方につけることができるので、若い人ほど早くこの考え方を身につけて取り入れてほしい運用手法になります。

私も社会人1年目のときからつみたてNISAを活用して、「長期・積立・分散」の資産運用を心がけています。

「長期・積立・分散」の資産運用は、ピケティの数式でも示した通りr>gなので、経済成長によって増えたパイを投資してみんなで分け合うプラスサムゲームです。

今後も私たちが予期しないところで金融危機が発生したり、他の要因で相場の下落が起こると思いますが、その時は焦って売ってしまわずに本書に書いてあるような過去の経験に立ち戻るのも有効だと思います。

自分の投資手法を確立し、いかなる局面においても投資を辞めずに市場に居続けること

これが個人的には重要なのかなと思いました。