「現在保険会社から米国ドル建リタイアメント・インカム(養老保険)の提案を受けているが、実際のところ中身はどうなんだろう…?」
本記事では、上記のような悩みを解決していきます。
結論から申し上げると、貯蓄性・積立型の米国ドル建リタイアメント・インカム(養老保険)は個人的にはオススメしません。
実際に過去に私が契約していたプルデンシャル生命の米国ドル建リタイアメント・インカム(養老保険)の商品性と返戻率(リターン)をもとに解説していきます。
・米国ドル建リタイアメント・インカム(養老保険)に加入するか迷っている
・米国ドル建リタイアメント・インカム(養老保険)の商品性を理解したい
・より効率的な資産形成に取り組んでいきたい
Contents
プルデンシャル生命「米国ドル建リタイアメント・インカム」の商品性
まず、私自身も過去に契約していたプルデンシャル生命の「米国ドル建リタイアメント・インカム」の商品性を紹介します。
概要
私が24歳の時に、契約していた米国ドル建リタイアメント・インカムの概要は以下です。
保険金額(基本死亡):20,000ドル
満期保険金:43,085.60ドル
年金月額(65歳以降):200ドル
保険期間(死亡保障):65歳まで
払込期間:65歳まで
保険料:62.21ドル(養老保険:61.60ドル+特約:0.61ドル)
簡単に米国ドル建リタイアメント・インカムについて説明します。
リタイアメント・インカムと聞くと馴染みがないと思いますが、保険の種類としては養老保険に該当します。
通貨は米ドルとなっており、養老保険とはざっくりいうと一定期間の死亡保障と将来に向けた貯蓄機能をうまく兼ね備えた保険のことを指します。
よりイメージしやすくするために図で見てみましょう。

まず、基本死亡による保険金額は20,000ドル(200万円くらい)となっています。(死亡保障期間は65歳まで)
また、保険金額も上図のように増額されていきます。(私が契約した例だと25年後から少しずつ保険金額が増加していく)
65歳までは死亡保障がなされ、65歳以降になると満期保険金を一時金で受け取るか、年金として受け取るかを選択できます。
仮に65歳になったときに満期保険金を一時金として受け取った場合、43,085.60ドルを受け取れます。
毎月年金として受け取る場合は月額200ドル受け取れます。(確定年金、保証期間付終身年金の形式によって変わる)
毎月の保険料は62.21ドルで、払込期間は65歳まで(私の場合だと40年)になっています。
このように養老保険は65歳までは死亡保障がなされ、65歳を過ぎたあとは満期保険金を一時金で受け取ったり、年金として受け取れるので、将来に向けた貯蓄機能を備えているという特徴があります。
返戻率(リターン)
貯蓄性があって、運用機能を備えている「米国ドル建リタイアメント・インカム(養老保険)」ですが、実際のところ貯蓄・運用機能はどうなっているのでしょうか。
契約時にいただいた既契約計算書をもとに経過年数、払込保険料(累計)、解約返戻金(保険を解約した時に戻ってくるお金)の関係をもとに解約時の返戻率(リターン)を算出して、表にまとめました。
経過年数 | 払込保険料累計 | 解約返戻金額 | 解約時リターン |
1 | 746.52 | 0 | -100.00% |
2 | 1493.04 | 588 | -60.62% |
3 | 2239.56 | 1267.8 | -43.39% |
4 | 2986.08 | 1965 | -34.19% |
5 | 3732.6 | 2679.2 | -28.22% |
6 | 4479.12 | 3411.8 | -23.83% |
7 | 5225.64 | 4162.6 | -20.34% |
8 | 5972.16 | 4932.6 | -17.41% |
9 | 6718.68 | 5721.6 | -14.84% |
10 | 7465.2 | 6530.8 | -12.52% |
11 | 8211.72 | 7288.2 | -11.25% |
12 | 8958.24 | 8066.6 | -9.95% |
13 | 9704.76 | 8866 | -8.64% |
14 | 10451.28 | 9687.4 | -7.31% |
15 | 11197.8 | 10531.4 | -5.95% |
16 | 11944.32 | 11398.6 | -4.57% |
17 | 12690.84 | 12289.6 | -3.16% |
18 | 13437.36 | 13205.6 | -1.72% |
19 | 14183.88 | 14147.2 | -0.26% |
20 | 14930.4 | 15115.6 | 1.24% |
21 | 15676.92 | 16111.4 | 2.77% |
22 | 16423.44 | 17136 | 4.34% |
23 | 17169.96 | 18190 | 5.94% |
24 | 17916.48 | 19275 | 7.58% |
25 | 18663 | 20392 | 9.26% |
26 | 19409.52 | 21540 | 10.98% |
27 | 20156.04 | 22720 | 12.72% |
28 | 20902.56 | 23932.2 | 14.49% |
29 | 21649.08 | 25177.8 | 16.30% |
30 | 22395.6 | 26457.8 | 18.14% |
31 | 23142.12 | 27772.8 | 20.01% |
32 | 23888.64 | 29124 | 21.92% |
33 | 24635.16 | 30512.4 | 23.86% |
34 | 25381.68 | 31938.8 | 25.83% |
35 | 26128.2 | 33404.6 | 27.85% |
36 | 26874.72 | 34910.8 | 29.90% |
37 | 27621.24 | 36458.2 | 31.99% |
38 | 28367.76 | 38048.2 | 34.12% |
39 | 29114.28 | 39682 | 36.30% |
40 | 29860.8 | 41360.8 | 38.51% |
41 | 30607.32 | 43085.6 | 40.77% |
米国ドル建リタイアメント・インカムは保険料の払い込み期間が65歳までとなっており、私の契約時の年齢が24歳だったため41年分の表記になっています。
解約時の返戻率(リターン)は解約返戻金額÷払込保険料累計で算出しています。
その年に米国ドル建リタイアメント・インカムを解約したとすると、累計払込保険料に対してどの程度お金が返ってくるのかを示しています。
着目してみると非常に気になるのが、返戻率(リターン)の低さです。
1つの区切りとして41年後の解約時の返戻率(リターン)に着目してみたいと思いますが、40.77%となっています。
この数値が意味するのは、41年後(65歳になったとき)にこの米国ドル建リタイアメント・インカムを解約したとすると累計払込保険料(元本)に対して40.77%お金が増えているということです。
意外と増えているような気もしますが、投資の世界に慣れている人からするとかなり低リターンであることがお分かりいただけると思います。
40.77%という数字に着目するとかなりいいように見えますが、40年というかなり長い期間をかけてこの数字というのは1年あたりで1.019%しか増えていない計算になります。(単純計算=40.77%÷40年)
参考として、米国の主要株価指数の1つであるS&P500指数は年平均利回りは5.3%となっており、30年間のリターンは365%となっています。
あくまで過去のデータに紐づいたものですが、S&P500指数は8年間で51%のリターンに到達しています。
また、著名なインデックス投資家である水瀬ケンイチさんは著書『お金は寝かせて増やしなさい』で2002年から2017年までの15年間の自身のインデックス投資の実績を公開されていましたが、15年間で50%のリターンを上げられています。
インデックス投資は誰でも簡単にできる投資手法です。
このようなインデックス投資と比較をすると米国ドル建リタイアメント・インカムの返戻率(リターン)が低いことが分かります。
米国ドル建リタイアメント・インカム(養老保険)は保険機能よりも将来の貯蓄機能が充実しているという形で謳われている商品ですが、運用機能は非常に残念な内容となっています。
プルデンシャル生命「米国ドル建リタイアメント・インカム」がおすすめできない理由
プルデンシャル生命の米国ドル建リタイアメント・インカムの商品性と返礼率(リターン)を紹介したところで、本題に入っていきましょう。
私がプルデンシャル生命の米国ドル建リタイアメント・インカムをおすすめしない理由は、一番期待したい役割である貯蓄・運用機能が非常に悪く、そして本来の保険の役割である保険の機能もイマイチだからです。
要は貯蓄・保険・投資の機能をごちゃ混ぜにした結果、どの機能も十分な役割を果たせていないという結果になっています。
「貯蓄」「保険」「投資」の重要性はよく分かりますが、やはりそれぞれ独立させて考えるべきです。
まず、このような貯蓄性・積立型の保険に加入することで、毎月自動的に保険料が引き落とされるから自分は貯蓄ができているという人をたまにみかけます。
保険を貯蓄代わりにする最大の問題は流動性の悪さです。
保険は銀行預金などとは違って必要になった際に必要な金額をすぐに引き出すということは容易ではありません。
また、早い時期に解約してしまうと、先ほどの返戻率(リターン)のところで述べたように大きく元本が割れて返ってきます。
私の契約例だと、契約してから20年経つまでは元本割れが確定しています。
そして、保険に投資の機能を求めると低リターンといった問題が生じます。
「だとしても、本来の保険の役割は果たしているのだからいいではないか?」
そういった声が聞こえてきそうです。
ただ、保険の役割としても1つ大きな問題があります。
それは、貯蓄性・積立型の保険商品というのは貯蓄と運用の機能が合わさった結果、本来の役割である保障(=保険金額)が小さくなってしまっているということです。
生命保険の本来の役割は、自分に万が一のことがあった場合に残された家族が安心して生活していけるよう、経済的に保障することです。
私が契約していたプルデンシャル生命の米国ドル建リタイアメント・インカムは毎月保険料を62.21ドル(約7000円)支払っているのに対し、保険金額は20,000ドル(約200万円)となっていました。
私は現在、保険の本来の役割を果たしてくれる掛け捨ての生命保険に切り替えていますが、毎月の保険料は910円で保険金額は1,000万円になっています。(楽天生命の「スーパー定期保険」)
シンプルに保険の役割を求めた結果、毎月支払う保険料は1/7に、保険金額は5倍になっています。
以上、プルデンシャル生命の米国ドル建リタイアメント・インカム(養老保険)は「貯蓄」「保険」「投資」の役割をごちゃ混ぜにした結果、どの機能も十分な役割が果たせていないということがお分かりいただけたでしょうか。
私が以前契約していた保険がプルデンシャル生命の米国ドル建リタイアメント・インカムというだけであって、貯蓄性・積立型の養老保険はほとんど「貯蓄」、「保険」、「投資」の機能が十分に果たせていない可能性が高いです。
「貯蓄」「保険」「投資」はそれぞれ独立して考えよう
「貯蓄」「保険」「投資」はいずれも重要ですが、ごちゃ混ぜにしてしまうと本来の役割を果たせなくなってしまうということを解説してきました。
大切なのは、「貯蓄」「保険」「投資」の目的を認識したうえで、それぞれ独立して考えるということです。
「それぞれ役割を分けて管理するのはめんどくさい…」
と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、少しずつ勉強すれば簡単です。
ここでは、「貯蓄」「保険」「投資」と切り分けるにあたって、参考となる考え方を紹介していきます。
貯蓄
まずは、貯蓄について考えていきましょう。
お金とは、欲しいものや必要なものを手に入れる手段でしかありません。
貯蓄の目的は、何かあったときに自分の生活を助けるため、将来やりたいことを実現するためにお金を蓄えておくということにあります。
なので、本来の目的として使う場面に必要な金額を引き出せる機能は必要不可欠です。
貯蓄に関しては、貯蓄用の銀行口座を作成するのがおすすめです。
そして、貯蓄をできるようになるためには、仕組みづくりが大切です。
自分の意思で、「今月余裕ができたら貯金をしよう」と思っているとなかなか貯金をすることはできません。
給与が入ってきた時点で一定額を貯蓄用口座に入金し、残ったお金で生活するという仕組みを作ってしまうのが簡単かつ効果的ですので、ぜひ試してみてください。
保険
生命保険の役割は、自分に万が一のことがあった場合に残された家族が安心して生活していけるよう、経済的に保障することにあります。
保険の仕組み自体は非常に素晴らしいものです。
ただ、保険で保障すべき金額や保険が必要かどうかはそれぞれの家族構成や年齢等で変わってくるため、絶対解というものが存在しません。
なので、保険に関してはまずは健康保険などの公的な保障制度を理解し、加入すべき保険を必要なものに絞るということことが大切です。
投資
投資の目的も様々ありますが、単純にいえばお金を増やすことだと思います。
「とはいえ、投資の世界って複雑だし、難しそう…」
と思われる方もいらっしゃるでしょう。
ただ、投資という言葉に苦手意識を抱いて、何もせずに銀行預金に預けているだけではお金も増えず、大きな機会損失となってしまいます。
個別株投資は複雑でかなり難しいですが、簡単に始められる投資も存在します。
投資を一度もやったことがない人にぜひおすすめしたいのが「インデックス投資」です。
少し勉強する必要はありますが、投資の世界に足を踏み入れるハードルは非常に低いので、ぜひ試していただければと思います。
まとめ
以上、私が過去に契約していたプルデンシャル生命の「米国ドル建リタイアメント・インカム」をもとに貯蓄性・積立型の養老保険がおすすめできない理由を紹介させていただきました。
「貯蓄」「保険」「投資」はいずれも重要ですが、ごちゃ混ぜにしてしまうとどの機能も本来の役割を果たせなくなってしまいます。
「貯蓄」「保険」「投資」はそれぞれ切り分けて独立して考えるようにしましょう。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。