経済・投資理論

経済成長の3要素「労働」「資本」「イノベーション」から紐解く米国が長期投資の対象先として最適な理由

2019年は1年間で29.5%も上昇したS&P500指数。

2020年に入ってからはイランとの軍事対立やコロナウイルスの影響がありながらも、連日主要3指数(NYダウ、S&P500、NASDAQ)は最高値を更新するなど引き続き強さがみられる米国株式市場。

今回の記事では、米国株式市場についてより長期的な視点(経済成長の3要素)から今後も投資対象として米国が最適だと思う理由について見解を述べたいと思います。

本記事で伝えたいこと

経済成長の3要素「労働」「資本」「イノベーション」どれをとっても米国はレベルが高い!長期的に経済学の視点に基づくと今後も米国は長期投資の対象先として有望なのではないか。

こんな人におすすめ!!

・米国株への長期投資をやっている
・経済成長の3要素について知りたい
・米国の今後の経済成長力について知りたい


経済成長の3要素とは?

長期投資を行うにあたって重要となるのが、経済成長です。

経済成長率と株式のリターンの関係性については概ねプラスの相関があると言われています。

なので、長期投資の対象先としては、今後も経済成長が見込める先がいいと思っています。

長期的な経済成長に対する1つの見方を示すものとして、経済成長理論があります。

これは生産力に着目した理論で、「長期的な経済成長は、国全体でどれだけモノ・サービスを作り出す能力があるかという経済全体の供給面から決まる」といった考え方です。

供給側が長期的な経済の水準を決め、需要もそれに応じてある程度決まってくるということです。

この理論に基づくと、生産力の増加が長期的な経済成長につながるという考え方になります。

経済学の世界では、生産力を決める要素が大きく分けて3つあると言われています。

それが、

労働(人)
資本(金)
イノベーション(技術革新)

の3つです。

たくさんの人が働いて(労働)、そこにお金を投じ(設備投資)、イノベーション(技術革新)が起こると、生産力が飛躍的に上がります。

供給側が需要を決めるという考え方に基づくと、新しく生産した分が付加価値としてGDPに計上されるので、経済成長につながるということです。

では、1つずつの要素に分解して特性を考えていきたいと思います。

①労働(人口)

経済成長において最も将来性を予測しやすい指標こそが人口だと思います。

単純に人口が増えれば、その分労働人口も多くなり、消費にまわる金額も増えます。

人が生きていくためにも、最低限衣食住への消費にまわります。

中でも生産年齢人口(だいたい15歳~64歳までの生産活動に就いている中核の労働者)の動向はかなり重要です。

生産年齢人口の人は労働という側面で見ても、社会に必要な財・サービスを供給するにあたって貢献度は大きいからです。

また、消費という側面で見ても、生産年齢人口の人々は労働の対価として給与を得ているため、消費額が大きくなります。

特に車や住宅などの大きな消費をするのはこの生産年齢人口の人々によるものが大きいです。

単純に人口が増えれば、労働人口が増え、所得が消費にまわるので需給どちらの面をとっても大きいのです。

②資本(金)

資本は簡単に言うとお金のことです。

このお金が機械・工場などの設備投資にまわって資本ストックが蓄積していきます。

いくら人(労働者)だけが多くいても、機械や工場のような設備(資本)がしっかりしていないとより効率的に物を生産することができないですからね。

なので、労働と資本がお互い補完しあって、生産性を上げているともいえます。

③イノベーション(技術革新)

イノベーションは技術革新のことです。

経済成長の3要素の中でも一番影響力の大きい要素になります。

これまでの産業革命を想像していただければ分かりやすいと思います。

第1次産業革命は1700年代後半から1800年代前半にかけてイギリスで起こりました。

当時人の手(労働)で行っていた作業を、蒸気機関で動力として機械化し、作業能率を大幅に上昇させています。

第2次産業革命は1800年代後半に、アメリカとドイツを中心に起こっています。

電力を用いることによって、工場での大量生産が可能になったほか、科学技術の革新も進んでいます。

第3次産業革命は、1900年代後半のコンピューターですが、現代の生活に必要不可欠な技術も産業革命によるものです。

コンピューターを用いることによって、機械の自動化ができるようになり、多くの企業で生産性が飛躍的に向上したのではないでしょうか。

いずれの産業革命における技術の台頭によって、大きく生産性が向上したことがイメージできるかと思います。

また、これまで産業革命の中心となった国がその時代の覇権を握っていることも注目です。

今後も第4次産業革命として、AIやIoTの技術などが注目されていますが、今後も目が離せないですね。

米中の対立が直近激化しているのもこれらの覇権争いが絡んでいるからだと思います。

生産関数

経済成長の3要素についてより経済理論的に紹介していきたいと思います。

私も昨年知った理論ですが、今後長期投資を考えている投資家の方々にはぜひ知っておいてほしい考え方です。

それが、こちらの生産関数というもの。

アーク
アーク
いきなり、難しい式が出てきましたね…

前述の労働、資本、イノベーションの関係性を表している式です。

Kが資本(設備投資)、Lは労働量(従業員の労働)、Aはイノベーションの度合い、aは資本分配率を示します。

まず、資本と労働の関係についてですが、資本分配率と労働分配率が対称関係となっています。

これは、人(労働)と機械(資本)の関係性によるものです。

具体的にイメージしていただきたいのですが、企業が生産量をこれまでの2倍にしたいと考えている場合に単純に設備を2倍にしても生産量は2倍になりません。

結局設備を2倍に増やしても、その設備を動かす人(労働)が足りないと生産量が増えないからです。

前項でも述べた通り、資本と労働はお互い補完しあって、生産性を上げているのです。

また、この式を見ていただければ分かるとおり、資本を増やしたり、労働を増やしていくと最初は生産量が増えるものの、やがてその伸びが鈍化していくような曲線を描きます。

そこで重要な意味を持つのがイノベーションです。

イノベーションによる新たな技術の台頭によって、より少ない労力で同じ機械を動かせるのであれば、資本を投じてたくさんの機械を設置することで生産を飛躍的に伸ばすことが可能になるという訳です。

前述のとおり、経済成長の3要素の中でも大きく影響を及ぼすという理由はこういったことです。

最終的に経済成長のカギを握っているのは、イノベーションということです。

米国の経済成長は今後どうなる?

では、これら経済成長の3要素を踏まえたうえで、今後の米国について労働、資本、イノベーションの観点から将来性を考えていきたいと思います。

①労働(人口)

アメリカは、先進国の中でも人口が増え続けている数少ない国です。

2018年時点のアメリカの人口は3億2735万人と人口は3億人を超えています。

国連の過去のデータの推移をみても、1990年が2億5253万人、2000年に2億8198万人、2010年に3億864万人、2015年に3億1992万人と増加し続けています。

合計特殊出生率は2016年で1.82であるのに、人口が増え続けている理由は他国からの移民を積極的に受け入れているからです。

今後の人口の予測については、総務省統計局の「世界の統計2018」によると、アメリカの人口は2030年に3億5000万人、2050年には3億8000万人を超える見込みとなっています。

人口(労働)という面でみれば、アメリカは今後も見通しはよさそうですね。

②資本(金)

資本については将来の予測が難しいため、現時点で米国がどのように資本を活用できているかを見ていきたいと思います。

設備投資の動向については、将来の景気に左右されるため、予測が難しいと考えました。

なので、米国企業が資本をより効率的に活用できているのかどうかをここでは考えていきたいと思います。

ROE(自己資本利益率)ROIC(投下資本利益率)を見ていきましょう。

ROE

ROEとは、自己資本利益率のことで、企業が株主から集めた資産をどれだけ効率よく運用できているのかを知ることができるものです。

ROE(自己資本利益率:Return on Equity)

…当期純利益を自己資本(株主資本)で割った指標。株主資本が、その企業の利益(収益)にどれだけつながったかが分かるため、企業の収益性を図る指標といえる。

最近では、このROEという指標は重要視され、日本は米国と比べてROEが低いなんてよく耳にしますが、果たして実際のところはどうなのか。

2019年1月7日の日経新聞の記事『ROE、3年ぶり低下 18年度は10%割れ』より日米のROEの差を見てみたいと思います。

日本企業(東証1部)の2018年度のROEは9.8%と10%と割っている現状です。

一方米国について、記事中ではアバウトではありますが、15%前後であると表記されています。

やはり、日米の差は大きいですね。

より米国の方が株主資本を有効活用できていることが分かります。

米国は、借入を増やして設備投資などに充てることによって、売り上げや利益を高め、ROEを伸ばすという企業が多いような気がします。

一方日本企業は、稼いだ利益は株主に返さず、内部留保を溜め込む企業が多いのではないでしょうか。

このような企業文化の違いがROEの差につながっている大きな要因だと考えられます。

ROIC

次にROIC(投下資本利益率)を見ていきましょう。

ROICとは、企業の資金を活かす力が分かる指標で、株式の発行や借入金で集めたお金でどれだけ利益を生んでいるかが分かる指標となっています。

ROIC(投下資本利益率;Return on Invested Capital)

…税引後営業利益を投下資本で割った指標。事業活動のために投じた資金(投下資本)を使って、企業がどれだけ効率的に利益に結びつけているかが分かる。

先述のROEと違う点は、税引後の営業利益を投下資本(自己資本と有利子負債の合計)で割っている点です。

この値が高いほどより効率的に資本(お金)を使っているということになります。

2018年度のデータですが、米国企業のROICはS&P500種株価指数の構成銘柄ベースで10.17%となっています。

この数値は高いのか、低いのか。

日欧についても同時点のデータを見てみましょう。

日本の上場企業の2018年度のROICは、6.75%となっています。

欧州については、STOXX600構成銘柄ベースで8.81%です。

比較していただけるとわかると思いますが、米国のROICは相対的に高く資本の活用がより効率的だと言えます。

米国のROICが高い理由の一つとして、GAFAなどのIT大手の会社が多く、少ない投下資本で巨額の利益を上げる企業が多いということがあります。

日本は産業構造が大きく変わっていないため、ROICも伸び悩んでおり、リーマン前のピークであった2007年のROIC(6.81%)も超えられていない現状です。

ROEとROICについて米国の資本効率の高さに着目しましたが、他にも米国企業はM&Aによる買収件数が多いことや、研究開発・人材への投資なども積極的であることも米国が資本をうまく活用できていることの証だと思います。

③イノベーション(技術革新)

今後もAIやIoT、ロボティクス、Fintech、ゲノムなど様々な分野でイノベーション(技術革新)が期待されています。

果たして、米国の技術革新力は世界的にどのような立ち位置なのでしょうか。

東洋大学が2019年にグローバル・イノベーション・ランキングというものを発表していました。

https://resemom.jp/article/2019/11/28/53589.html

このランキングは東洋大学グローバル・イノベーション学研究センターが世界各国のイノベーションの進展度を評価する指標として独自に開発した「グローバル・イノベーション・インデックス」を用いて、主要60カ国を国別にランキング化したものだそうです。

大きく5つのカテゴリー、「国際調和」「市場動向」「技術革新」「人間力」「関連政策」に分かれています。

これら総合順位で見ると、1位は「シンガポール」、2位は「ルクセンブルク」、3位は「スイス」となっています。

アーク
アーク
あれ、米国は…?

米国は9位となっています。(ちなみに日本は32位…)

総合順位は思ったより米国は高くありませんでしたが、着目したいのは「技術革新」の項目です。

「技術革新」という項目だけでみると米国は2位となっています。

ちなみに1位は中国で、中国と米国のスコアは突出しているみたいです。(ちなみに日本の「技術革新」は3位)

「技術革新」は米中の覇権争いに大きく影響してくる要素なので、今後もこの争いは目が離せませんね。

技術革新力についても米国は中国とともに世界を圧倒する技術を持っていることがお分かりいただけたと思います。

今後様々な分野で技術革新が起きてくれば、経済成長に与えるインパクトはかなり大きいと思います。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

経済成長に大きな影響を与える3要素、「労働」「資本」「イノベーション」ともに米国は将来期待できることがお分かりいただけたと思います。

将来はどうなるか不確実ですが、今回紹介した事実を踏まえると米国は今後も大きく経済成長を続ける可能性があり、長期投資の対象としては1番期待できると個人的には思っています。

これらの理由から私も毎月積み立てている投資信託への投資割合は米国に比重をおいています。

一方、わが国日本は米国と比較するとかなり見劣りすると個人的に感じており、その結果日本株式への投資はインデックスだとあまり期待がもてないので、アクティブファンドに投資をしています。

市場を正確に予測することはかなり難しいですが、長期的な視点ではより経済学の理論に近づくのではないかと個人的に思っています。

今後もしっかりと米国市場への長期投資を続けていきたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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